研究目的
堀田 のぞみ
E-mail: hotta.nozomi@ocha.ac.jp
「科学者-教育者パートナーシップ」(scientist-teacher partnerships)は大学の科学コミュニティと幼小中高等学校教育の連携を指す。現在、理科教育界が連携する対象は、大学にとどまらず、博物館や産業界などもあり多様である。さらに教育者のパートナーとなる「科学者」の範囲も様々である。
一方、米国ではこういった連携の際には個々の機関の様々な違いが障壁となることが論じられてきた。例えば、ある論者は、児童・児童の独特の指導と学習文化(ボキャブラリー、ポリシー、手順)を持つ学校の理科教育に対して、科学者が参加して指示することは時として難しいと指摘する。加えて、科学界のメンバーは教員や科学者でない者を無意識のうちに威圧してしまうことから、科学教育における連携欠如の改善に到達できない理由に両者のコミュニケーションの取り方の違いをあげている。
我が国においては、諸外国と比較して、理科の好きな児童・生徒の割合が低いという状況がある。児童・生徒の理科学習を改善するためには、まず、教員の指導力を高めることが早急な課題である。
本研究では、大学が小中学校の理科の教育者が真のパートナーとなることで、理科教師が自信をもって理科授業を実施できる環境を創出できれば、児童・生徒たちの理科学習への関心が促されるという仮説のもとに、現職教員を対象とした新たな教授法を構築することを目的としている。
そのために、大学の講師による新しいOJT(On the Job Training)方式として、「黒衣(黒子:くろご)メソッド」を提案し、その指導法の確立を目指す。その際、日本のみならず海外における、大学および研究機関が小中学校の理科の教育者に実施する現職教員を対象とした理科の研修プログラムに注目して比較研究を行う。